「アザリアの仲間たち展」2017年7月~9月花巻にて開催予定!

洋躑躅会小集第一回と馬鹿旅行

こんばんは!実行委員会のFの方です。

 

ここ最近私生活も、企画展準備もバタバタバタバタしております~。
先日も東海地方をめぐり、纐纈熊雄さんと村上亀治さんの資料をお借りしてまいりました!
これらの資料は、現物資料として展示予定です。
ふふふ、すごいもの借りてきましたよ~!ご期待ください~!

 


さて、本日は(だいぶ間が空いてしまいましたが)
『アザリア』創刊から一週間後のおはなしをしたいと思います。


1917(大正6)年7月7日夜、自分達の同人誌が完成した喜びを胸にアザリアメンバーが集いました。
「洋躑躅会小集第一回」と称されたその集まりの様子が『アザリア』第二輯に書かれています。


七月七日夜皆集る、丁度栗の花がまっ白く咲いていゝ香がして来る時だった、われらはおそく来る、早く来た人にあやまらねばならなかった、どうした処で心と心とで参り来った人だちだ、そこにへだつべき何物があらう、終夜語り暮した、ほんとにあの高くそびゆる岩手山の清らかさの様に
会者十名、伊藤、潮田、河本、纐纈、宮沢、鯉沼、保阪、小菅、福永、市村、作品の互選、テーブルスピーチ二、三あり、河本、潮田、小菅三氏のもの高点に入る、会開会後、雫石に旅行する馬鹿者もあった、(『アザリア』第二輯より)

 


この文章はおそらく保阪が書いたと考えられます。
この高揚感! 青春の喜びに満ち満ちた文章は、いっそまぶしいくらいですね!

この時、高点が入った作品は不明ですが、小菅、河本、潮田にとっては嬉しいことだったでしょう。

 

 

「雫石に旅行する馬鹿者」とは、宮沢、保阪、小菅、河本の四人のこと。
彼らは深夜0時15分、盛岡から春木場まで夜を徹して歩きました。
その距離約20キロ! さすが農業青年たち、体力あります。

興奮冷めやらず、友人たちと夜をそぞろ歩くのは、彼らにとって印象深い夜だったのでしょう。
彼らはそれぞれ、この夜の散歩のことを作品にしています。
保阪にいたっては、歩きながら60首以上の短歌を詠んでいました。

 


合歓の葉の/パット合ふごとし/友の心/まつたく旅を供に思へり、
まつくろに濡れた/街道の流れた火、/踏んで通れば/心がさびしき、
雫石は/田舎の町なれば/あけがたに/徹われらに犬が吠え渡る、
あけがたの/河原に睡るわれらなれば/大空の虹と、百姓が/わらふ(保阪嘉内「馬鹿旅行日記」より 歌稿ノート『我は独り』)

 


夜のそらにふとあらはれてさびしきは、床屋のみせのだんだらの棒
夜をこめて七ツ森まできたりしに、はやあけぞらに草穂うかべり
河ぶちのまひるゆらげるいしがきの、まどろみに入りてまた鳥なけり
琥珀張るつめたきそらは明ちかく、おほとかげらの雲をひたせり(宮沢賢治「夜のそらにふとあらはれて」より 『アザリア』第二輯)

 


淋しい月がさしよりて寝しづまる家
河原にね入る人らに朝の虹立つ
山の緑に終夜歩みし夜があくる(河本義行「車のきしり」より 『アザリア』第二輯)

 


不良少年夜道して歌よむ。
青空と黒くもの見分けつきやらず雲飛ぶ丘の暁の月。
緑こき柳の葉裏風に白々七月の真昼の陽の中に立つ(小菅健吉「不良少年」より 『アザリア』第二輯)

 

 


夜通し歩いて、河原で寝入り、明け方の空には虹がかかる……。
この「馬鹿旅行」(命名:保阪嘉内)は、彼らの友情を深くする一夜だったようです。


ちなみに、賢治はこの「馬鹿旅行」の思い出を、後に「秋田街道」という散文作品にしています。
その中には「河本さん」という名前が出てきます。

 


 いつかみんな睡ってゐたのだ。河本さんだけ起きてゐる。冷たい水を渉ってゐる。変に青く堅さうなからだをはだかになって体操をやってゐる。
 睡ってゐる人の枕まくらもとに大きな石をどしりどしりと投げつける。安山岩の柱状節理、安山岩の板状節理。水に落ちてはつめたい波を立てうつろな音をあげ、目を覚ました、目を覚ました。低い銀の雲の下で愕おどろいてよろよろしてゐる。それから怒ってゐる。今度はにがわらひをしてゐる。銀色の雲の下。(宮沢賢治「秋田街道」より)

 


こちらの散文作品もぜひ全文読んでいただきたいです。
(どうでもいいけど、河原で起きた順番は、河本→宮沢→保阪→小菅だと思われます。ということは、苦笑いをしているのは小菅…?)

 


そして、この「秋田街道」の直筆生原稿なんですが……

実は今年の9月に宮沢賢治記念館で開催される「文芸同人誌『アザリア』100周年記念展」にて、な、なんと! 初公開されるのです!

この記念展では、本物の『アザリア』(小菅本)の公開もされます!

宮沢賢治と『アザリア』の仲間たち」展とも開催時期が重なってますし、スケジュール次第ではどちらも見れますよ~!

 

記念展の詳細はこちらから http://www.city.hanamaki.iwate.jp/bunkasports/505/506/p004128.html
会期は9月2日から9月24日までのようですが、
「秋田街道」原稿公開は9月16日から9月24日ですので、ご注意ください。


いやあ、盛り上がってまいりましたね、『アザリア』。
皆さまもぜひ花巻で、彼らの青春のワクワク感に触れてくださいね~♪

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